洗濯のすすめ
洗濯の悩みは、尽きない。
洗濯機も洗剤も新機能が追加されて、進化しているはずなのに。
洗うことを専門にするクリーニング店には、
当たり前のことですが、家庭のような洗濯の悩みは無いのです。
そんな洗濯の専門家が原理原則から洗濯についてお伝えしていきます。
洗濯の悩みといえば、何十年と変わっていない
洗濯という家事を1日に3~4回する人もいれば、
週に1回という人もいます。
クリーニング屋では、朝から晩まで何十回と毎日洗濯しています。
自分の洗濯に納得している人もいれば、そうでない人もいます。
その差は一体、何なのでしょうか?
- 汚れが落ちていない
- 衣類の黄ばみ
- 部屋干しの生乾き臭
- タオルが臭う
- 洗濯槽が汚れる
- お肌への影響(安心・安全な洗剤を選びたい)
こうした洗濯の悩みを解消するために、洗濯を紐解いていきます。
家庭での洗濯の流れ
家庭の洗濯は、洗濯機で洗って干して、畳む。
場合によってはアイロンをかけます。
クリーニング屋の洗濯は、4つの工程があります。
- 洗う
- 乾かす
- アイロン
- シミ取り
この4つのやり方の違いで、洗濯を悩むか悩まないかが変わるのです。
洗濯の原理原則とは
洗うということは、繊維と繊維の間に水を通すことです。
キレイな水の中に、汚れた衣類を入れて
混ぜ合わせることでキレイにしていきます。
洗濯の手順は、シンプルです。
- 洗剤を使って汚れを浮かして
- 脱水で汚れを飛ばして
- すすぎで汚れを水に出してキレイにします
そして、洗浄力を上げるポイントはこの4つです。
・洗浄力を上げる4つのポイント
- 洗浄時間を長くする
- 水温を高くする
- 洗剤の濃度を濃くする
- 少ない点数で洗う
洗濯機の機能や洗剤の成分ではなく、
洗剤の量と、水の量や温度、洗う時間がポイントです。
クリーニング屋は、洗濯の手順の中で、
この4つのポイントを押さえて洗濯しています。
洗濯が上手くいかないときは、この4つの方法を試すことをおすすめします。
この方法ですが、デメリットを知る必要があります。
- ①洗浄時間を長くする → 洗う時間が長いと服が傷みやすい
- ②水温を高くする → 43℃から綿は縮む
- ③洗剤の濃度を濃くする → しっかりと洗剤をすすぐため、すすぎの回数が増える
- ④少ない点数で洗う → 洗濯の回数が増える
メリットとデメリットを理解した上で
自分のライフスタイルに合った洗濯を選んでいくことが大切です。
洗剤を選ぶ上で重要なこと
そもそも洗剤を使う理由は、
水だけでは落とすことができない油の汚れを落とすために使います。
一般的に、粉洗剤は洗浄力が高い反面水に混ざりにくく、
液体洗剤は水に混ざりやすいので洗剤残りもないため、
使い勝手がいい反面汚れ落ちもおだやかです。
石けん洗剤は環境や肌にやさしい反面、使用量を多く必要とします。
このようにそれぞれ特徴があれど、
クリーニング屋は洗浄力が洗い方で変わることを知っています。
(洗浄力を上げる4つのポイント)
洗剤を選ぶ上で知っておくべきことは、
洗剤の原料は、天然油脂(植物)や石油や牛脂といった油であることです。
洗剤の役割は、油汚れを浮かすことです。
(化粧落としのクレンジングをイメージすると分かりやすいです)
つまり、洗剤残り=油のようなものが残ることになり、
黄ばみやニオイの原因になります。
どのクリーニング屋さんも口を揃えていうのが、
「すすぎの回数や水の量を多くして洗濯しましょう」、です。
キレイな水と混ぜ合わせることで、
洗剤のすすぎ残しも減らすことに繋がるのです。
服に洗剤が残ることで、それが肌に合わないと
敏感肌や赤ちゃんには肌荒れの原因になることもあります。
良い洗剤というのは、すすぎ残しが少ない洗剤とも言えます。
洗剤だけでは落ちない汚れをどうやって落とすか
洗剤だけでは落ちない汚れのことをシミと、ここでは呼びます。
この汚れを落とすには、シミ取りという作業が必要です。
一般的に家庭で落とすことのできるシミは、
漂白剤を使って落とします。
この作業は手間がかかる上に、完全に落とせないシミもあり、
面倒で厄介です。
漂白剤の効果は、汚れに含まれる色素を無色にして目立たなくして、
においを防ぎ、清潔を保ちます。
・使う前に必ず理解しておくこと
漂白剤には2種類あり、酸素系と塩素系があります。
酸素系には2種類あり、粉末タイプと液体タイプがあります。
選ぶのは、粉末タイプの酸素系漂白剤です。
塩素系を使うと生地に相当な負担がかかります。
塩素系漂白剤を使っても落ちないシミを、
クリーニング店に依頼すると
薬剤によっては生地に穴が開いてしまうことがあるので注意してください。
手順としては、まず中性洗剤で一度洗います。
その後、40℃くらいの水を用意して、
漂白剤(酸素系)を入れて溶かします。
その中に30~1時間ほど漬け込みます。
漬け込みした後は、漂白税が残らないようにすすぎます。
すすぎの時に、クエン酸を溶かした水ですすぐと中和されて、
アルカリ焼けという衣類の黄ばみを防ぐことができ、
衣類も柔らかく仕上がります。
家庭でこの手順を行っても落ちない汚れは、
クリーニング屋さんに持っていきシミ取りを依頼するしかありません。
しかし、クリーニング屋さんの腕や技術によって、
シミの除去率に差が出ます。
一般的に70%以上落とすことができれば、優良店と言われます。
質の良いクリーニング屋さんを知っていることは
大切な服を長持ちさせるために欠かせないことです。
洗濯の新基準を理解する
これまで洗濯をする上で大切なことは、
洗濯の悩みを解消することでした。
つまり、服をキレイに洗うことですが、
今の時代は生活が豊かになり、キレイにする範囲が広がっています。
洗濯によって落とした汚れはどこへ行くのか想像したことがあるでしょうか。
これまでは、目の前から汚れが消えれば、それで良かったかもしれません。
しかし、これからの時代は違うことをなんとなく感じている方もいるかもしれません。
例えば、洗濯槽の汚れ。
洗濯の原則、汚れた衣類をキレイな水で混ぜ合わせるのに、
汚れた洗濯槽のまま洗濯すれば、服はキレイになりにくいです。
洗濯槽は定期的に洗濯槽クリーナーで掃除することが必要ですが、
ではなぜ、そもそも洗濯槽が汚れるのでしょうか。
その原因は洗濯の時に使う洗剤や柔軟剤といった
油を原料にしたものが、すすぎ切れずに残って
少しずつ蓄積していくからです。
洗濯槽クリーナーで落とした汚れはどこへ行くのか、
次々に辿っていくと、排水パイプや汚水桝です。
特に戸建ての家庭では汚水桝が10年もすると詰まってしまい、
お手入れの方法がyoutubeの動画がいくつも上がってきています。
クリーニング屋やコインランドリーでは、
グリストラップがヘドロになって蓄積されます。
服をキレイにする代わりに、
洗濯槽やグリストラップが汚れていたことに気づかされます。
どこの汚れも油を原料にしたものが蓄積していき、
洗っては目の前から移動させているに過ぎません。
では、最終的に汚れはどうなるか、と調べにいくと、
下水処理場や浄化槽に流れていき、そこにいる"微生物"に
よって分解されていることが分かります。
そして、キレイになったとしている
上澄みの処理水を河川に放流しています。
この令和の時代も微生物分解に頼っているのが、現状なのです。
つまり、微生物によって処理できないと、汚れは消えない、ということです。
合成洗剤やマイクロプラスチック等は、
分解されずに自然界に流れていることもあるでしょう。
今では環境に良い素材の服や洗剤を選ぶ人も増えてつつあり、
服をキレイにするのは当然として、その後のことにまで
責任を持つという姿勢が必要とされています。
上流の川の水はキレイでも、
下流に行くほどキレイではなくなっていきます。
下流の人だけでなく、その先の海や川の生物まで豊かに、
というのが世界の潮流のように感じます。
日本の洗濯文化をクリーンに
家庭の洗濯でも悩みがあるように、
クリーニング業界にも実は多くの悩みがありました。
服をいためがちなこと。
水を汚すこと。
人を酷使すること。
”洗濯にもサステナブルを”
私たちには、そのための新たな知恵や技術があります。
「洗う」を洗いたい。
やっぱりキレイは
気持ちいいから。
【周りと差がつく、洗濯講座】
70年の歴史を紡いできたクリーニング店の代表が各地で講座を実施しています。
文章だけでは伝わらないことが現場には山ほどあります。
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洗濯講座の開催予定
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