【対談】地球環境に負荷がないことは、もはやルール (ファクトリエ代表 山田さま)

『海をまもる対談』

森で生まれた美しい水の恩恵を受けて、生活や事業を日々営んでいます。
この水を可能な限り美しいままに海へ届けていくことで、Save the Oceanは海をまもっていきたいと考えています。
そんな海をまもるをテーマに、様々な方と地球や未来への想いについて対談いただきます。

 

ゲスト:山田 敏夫(ファクトリエ代表/ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役)

聞き手:東本 猛(Save the Ocean株式会社 代表取締役Co-Founder)

 

 

語れるもので、日々を豊かに。

 

 

東本(以下、敬称略):本日はファクトリエ代表の山田敏夫さんとお話をさせていただきます。まずはファクトリエさんの事業と大切にされている点をお聞かせください。

山田さん(以下、敬称略):はじめまして、ファクトリエの山田です。ファクトリエを簡単に説明しますと、日本製の洋服を作って売っている会社です。

ただ、何が違うかというと、全国各地の工場さんと一緒に、洋服を最初から企画して作って販売している点です。

この業界の生産者は搾取の対象になりやすいのですが、そもそもWin-Winになるようスタートしているので、すべての商品には工場の名前がついていますし、価格も工場の希望を尊重しています。

大切にしているという点では、『語れるもので、日々を豊かに。』というmissionですね。『語れるもの』はお客さんに語りたくなるものや背景を理解するもので、『日々豊かに』は心の温度を一度でも上げたいと思っています。

コロナ禍で人と会えなくて心が寂しくなっている人たちが増えていると思います。

心の温度を上げにいくことをすごく大切にしていて、だから語れるものでありたい。誰が作ったかがわっかたり、どんなところにこだわりを持っているかなど、自信を持つという点で心の温度を上げたいなと思います。

 

日本製にこだわる理由

東本:いつも山田さんと話す中で Made in JAPAN を残したいということをよく聞きますが、日本製を残したい思いをお聞かせください。

山田:人間は、なんでも分類をしたがります。例えば、イルカとクジラは実は同じ生物で大きさが違うだけなんです。でも人間が勝手に大きさで分けて、違う名前をつけて分類しています。こうやってあらゆるものをカテゴリーに分けて分類したがりますよね。

多様性やグローバルゼーションが当たり前になればなるほど、自分のアイデンティティを保つために日本製が求められるようになると思います。というのも僕は海外に行った時に日本製っていうものにアイデンティティを感じたし、海外に行って和食が恋しくなるようなものだと思います。

自分が育ってきた国が日本であるというアイデンティティ上、日本製って絶対的に必要って思うし、人は誰が作っているのかを知ったら乱暴はできないと思います。誰が作ったか知っているということは、モノを長く愛する上では重要なことなので、「日本製」と「誰が作っているか」というところはすごくこだわっています。

アパレルにできる、コットンの再生

 東本:SDGsの取り組みや環境のことについて、きっかけと実践されている取り組みについて教えてください。

 山田:地球環境に一番害を及ぼすのが石炭や石油などのエネルギーと言われていますが、ファッションも自分たちのやっていることが地球にとって大きな害を及ぼしているといえます。

その根源は「トレンドというもので心をたきつけて、買わなきゃという環境を作り出している」という点です。その結果、地球に負荷をかけている産業になってしまっています。これは良くないなと思い、ファクトリエでは、当初から廃棄もセールもしない、定価のみでの販売をしてきました。

しかし、もう少しやらないといけないことがあって、コットンがどうリサイクルされるかがとても重要だと考えています。ウールはウールで、ポリエステルはポリエステルで再生できるけども、コットンだけはどこも前例がありませんでした。

1枚のTシャツを作るのに必要な水は、主にコットンを育てるための水で浴槽約11杯分が必要になります。更にCO2と水は地球温暖化に一番重要なファクターであり水の94%と輸送の92%この二つは原料調達段階で起こり、主にコットンを育てる時と輸送です。これをリサイクルさせたら大動脈に切り込めると考えました。
そして3-4年かかり僕たちは今年9月日本初の水平リサイクルするコットン100%のTシャツの発売にたどり着きました。成功は全国の提携工場に協力をいただいたからです。Tシャツを送ってもらったらまたそのTシャツを綿にしてそしてまたTシャツにすることができるようになりました。

 

地球環境に優しいのはルール、その上にどんな価値を出していくのか

 東本:オーガニックコットンや土に還るなど素材などアパレルから見たSDGsや地球環境に負荷がないことをやっている会社はたくさんあると思います。僕らはクリーニング業ややコインランドリーの仕事をしていく中で、そういう服だからこそ環境に負荷のない洗剤で洗ってほしいと思います。これから環境に配慮した服を選んだ時に環境負荷のない洗剤があるとより相乗効果になるのではないかと考えています。

山田:本当にそうですよね。地球環境に負荷がないことはもはやルールですよね。サッカーで手を使ってはいけないように、ラグビーで前にパスを出してはいけないように、地球環境に優しいのはルールで、その上にどんな価値を出していくのかという話ですよね。

東本:物事を変えていくときはより多くの共感してどう買い物で選択していくかでしか変えることができないとすれば僕らはより多くの共感を皆さんに持ってもらえるような活動ができればいいなと思っています。

 

長く使う前提でものづくりをする

東本:服を着ることは洗うことから避けられないと思うのですが、服を作る側の山田さんから見たどう思われますか。

 山田:おっしゃる通りですよね。

最近思うのですが、生地試験は発売前しかしないですよね。実際に日常で数十回着用したあとの生地試験や着心地テストはしないわけですよ。その人が一回目の触ったときや着た時のテンションでしか考えられていないのではないか?と。
「着ることは洗うこと」で思うことは、長く使う前提で生地試験をしないといけないと感じています。商売は顧客との長い関係づくりなので、リピートしていただけるということは、長く愛用してもらうとですよね。一回着て洗濯してダメになったとか、2,3回着たら毛羽立ってきたとか、こういう状況はなくしたいですね。だから洗った時にクオリティーが維持されているということは、モノづくりとしては大事にしないといけないと思います。

東本:なぜファストファッションが繁栄したかということを考えると、例えば白いパンツのように「どうせ黄ばんで汚れて着れなくなる」からワンシーズン1本履いて捨てるようなハイパー消費社会にしてしまったことが地球環境に負荷を与えてしまっていると思います。モノが増えてしまった時代では長く使うことを前提に考えた時代や文化に入らなければいけない入り口に立っていると思います。いいものを長く使うスキルやモノ、知識を伸ばしていく必要があるんじゃないかなと思います。

私たちもクリーニング業として社会の問題をどう解決できるかを考えた中で、洗うことで環境に負荷のない洗濯洗剤にたどり着きました。衣服もいいものを長く使ってほしいという思いで共存していきたいと思います。

 山田:そうですね。最近ではアレルギーの方が増えているのを感じています。症状がひどい方たちは服が汚れてしまうこともあるようで、一日に何回も着替えなければならないといった現状もあるようです。

洋服のことだけでいえば洗浄力が高くよく落ちることが良いですが、洗浄成分が強いことだけが良いということでもないです。肌の弱い子たちが洗った服を着た時に、肌に影響が出てしまっては困りますし。肌の弱い子の為にも、本当の意味で環境にも着る人にも作り手にも優しいものになると良いなと思っています。

 

文:梅澤 ルミ子