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デニムの洗い方 完全ガイド|色落ち・型崩れを防ぎ10年育てる洗濯|クリーニング店監修
デニムは「洗わないほうがいい」──そう思って我慢していませんか。
実は、汗や皮脂が残ったままの放置こそが、生地を内側から弱らせ、裂け・ゴワつき・色あせの原因になります。
この記事では、クリーニング現場の知見をもとに、デニムを“消耗品”ではなく「10年育てる一着」にするための新常識を整理。
裏返し・水温・洗剤量・コース設定・脱水1分・陰干しまで、家庭で再現できる“管理する洗濯”を解説します。
1.なぜデニムは「洗わない」ではなく「管理する」べきなのか?

「デニムは洗わないほうがいい」という言葉は、ヴィンテージ愛好家の間で一つの美学として語られてきました。しかし、現代のクリーニングの知見から言えば、それは「生地の寿命を半分以下に縮める、最も危険な選択」です。
「洗わない=守る」の誤解
デニムは丈夫な衣類ですが、繊維の隙間に汗や皮脂、目に見えないホコリが蓄積されると、それらが時間とともに「酸化」します。酸化した汚れは繊維を内側からボロボロに脆くし、ある日突然、太ももや股の部分が「裂ける」という悲劇を招きます。
10年育てるための「管理」という考え方
デニムにとって、洗濯は単なる汚れ落としではなく、「繊維のリセット」です。
水分を与えることで、着用によって伸びきった繊維が適度に締まり、本来の強度を取り戻します。大切なのは、以下の3要素をプロのレベルでコントロールすることです。
・タイミング(いつ洗うか): 汚れが酸化して定着する前。
・方法(どう洗うか): 摩擦と熱を徹底的に排除した洗浄。
・洗剤設計(何で洗うか): 染料を動かさず、汚れだけを抜く。
このガイドでは、あなたの愛する一着を「消耗品」から「生涯のパートナー」に変えるための、具体的な管理術を伝授します。
2.一目でわかる!デニム洗濯の3ステップ要約
詳細な解説に入る前に、まずは基本の「型」を脳内にインプットしましょう。
デニムを長持ちさせる洗濯は、次の3つの流れで覚えるとシンプルです。
① 準備(洗う前)
デニムを裏返し、ボタンやファスナーをすべて閉じます。
これだけで表面の擦れが減り、型崩れもしにくくなります。
プロのポイント:
摩擦ダメージを物理的に防ぐことが最優先です。
② 洗浄(洗う工程)
中性洗剤を使い、洗濯機は弱水流(ドライコースなど)で5〜10分ほど洗います。
プロのポイント:
「汚れを完璧に落とす」より、
「生地にダメージを与えない洗い方」が重要です。
③ 乾燥(干す工程)
脱水は1分以内にとどめ、裏返したまま陰干しします。
プロのポイント:
デニム最大の敵は紫外線です。
直射日光を避けるだけで色あせを防げます。
3.クリーニング現場の技術を家庭で再現する「究極の洗い方」

ここでは、勝川ランドリーが実際に行っている工程を、家庭の洗濯機や道具で再現できるよう詳細に落とし込みます。
STEP 1|洗う前の徹底した「下準備」
デニムを長持ちさせるための戦いは、水に入れる前から始まっています。
・ポケットの点検: 砂や小銭は、洗濯中に生地を傷つける「研磨剤」になります。
・フルクローズ: ファスナーとボタンは全て閉めます。開けたままだと、洗濯中に前立てが波打つように変形する「ジッパー波打ち現象」の原因になります。
・裏返しの魔法: これだけで、洗濯槽とデニム表面がぶつかる際の摩擦ダメージを80%以上カットできます。
STEP 2|「洗剤量」と「水」の黄金比
・洗剤は「規定の半分」でいい: デニム洗いに大量の泡は不要です。むしろ、泡が多すぎるとすすぎ時間が長くなり、水に触れる時間が伸びることで色落ちを促進させます。
・水温は「30℃以下」を厳守: お湯はインディゴを溶かし出す溶媒になります。冬場でも、必ず常温の水道水を使用してください。
STEP 3|洗濯機の設定:標準コースは使わない
洗濯機の「標準コース」は、タオルや肌着を叩き洗いするために設計されており、デニムには刺激が強すぎます。
・「ドライコース」「おしゃれ着コース」「手洗いコース」を選択: 水流が穏やかで、衣類が泳ぐように洗える設定がベストです。
・ネットの活用: デニムを1本ずつ洗濯ネットに入れることで、他の衣類との絡まりによる「ねじれ」を防げます。
STEP 4|脱水時間のコントロール(最重要)
多くの人が失敗するのが「脱水」です。洗濯機の自動設定だと5分以上回ることがありますが、デニムにとっては拷問に近い時間です。
・設定は「1分」以内: 水気が滴らない程度で十分です。脱水が長いと、生地に深いシワが刻まれ、そこから色落ちして「変なスジ(アタリ)」がついてしまいます。
STEP 5|干し方の極意「筒干し×陰干し」
・筒干し: ウエスト部分を広げて、円筒状に吊るします。内側まで風が通るため、最も乾きにくい股部分の生乾き臭を防げます。
・陰干し: 直射日光は数時間でデニムの青を「黄色っぽく」変色させます。必ず風通しの良い、日の当たらない場所を選んでください。
4.なぜあなたのデニムは「ゴワつき、色あせる」のか?
家庭での洗濯で「良かれと思って」やっていることが、実はデニムの寿命を削っています。
① アルカリ性洗剤の破壊力
一般的な粉末洗剤や一部の液体洗剤は、皮脂汚れに強い「アルカリ性」です。しかし、デニムの染料であるインディゴはアルカリに非常に弱く、水に溶け出しやすい性質があります。「しっかり洗いたいから」と洗浄力の強い洗剤を選ぶことは、自ら色落ちを加速させているのと同じです。
② 界面活性剤による「泡」のワナ
泡立ちが豊かな洗剤は、洗濯槽の中で衣類を拘束し、微細な振動による摩擦を発生させます。プロの現場では「泡切れの良さ」こそが衣類への優しさだと考えます。過剰な泡は、繊維の表面を毛羽立たせ、デニム本来のツヤを奪う原因になります。
③ 柔軟剤が招く「におい戻り」
意外かもしれませんが、デニムに柔軟剤は推奨しません。柔軟剤の成分は繊維をコーティングしてしまいます。これが繰り返されると、繊維の奥に汚れを閉じ込めることになり、かえって「酸化臭」や「雑菌の繁殖」を招きやすくなるのです。
5.デニムを解剖する|構造とリスクの正しい理解

インディゴ染料の「中白構造」を理解する
デニムの糸を断面で見ると、中心部は真っ白です。これを「中白(なかしろ)」と呼びます。染料は繊維の奥まで浸透しておらず、表面に乗っているだけの不安定な状態です。
この「剥がれやすさ」があるからこそ、美しいタテ落ちや経年変化が生まれますが、一方で「洗濯の失敗」が致命傷になる理由でもあります。
リジッド(生)デニムの「初回洗い」の真実
未洗いのデニムは、最初の洗濯で3%〜10%も縮むことがあります。
・ウエストより「丈」が縮む: 横方向の伸びは着用である程度戻りますが、縦方向(レングス)の縮みは戻りません。
・糊落としの儀式: 糊がついた状態で穿き続けると、鋭いシワが入りすぎて生地が破れやすくなります。最初にある程度の糊を落とし、繊維に柔軟性を持たせることが「10年はく」ための第一歩です。
ストレッチデニムの「劣化」を防ぐ
ポリウレタンが含まれるストレッチデニムは、熱に非常に弱いです。乾燥機の使用や、夏場の車内放置などは、ポリウレタンを劣化させ、膝が出て戻らなくなる「伸びきり現象」を引き起こします。これらは洗濯よりも「熱管理」が重要です。
6. 10年育てる理念|あなたの「洗う」が世界を救う理由
ここで少し、デニムが作られる背景に目を向けてみましょう。私たちが「正しく洗って長く着る」ことには、驚くほど大きな社会的意義があります。
デニム1本に隠された「水」の代償
一般的なデニム1本を生産するために消費される水の量は、約7,000〜10,000リットルと言われています。これは、一人が10年間に飲む水の量に匹敵します。
また、排水処理が不十分な地域では、インディゴ染色の排水が河川を汚染し、生態系に深刻なダメージを与えている現実があります。
サステナブルの本質は「買い替えないこと」
「エコ素材のデニムを毎年買う」よりも、「普通に作られた良質なデニムを10年穿き続ける」ほうが、環境負荷は圧倒的に低くなります。
1本のデニムの寿命を2倍に伸ばせば、その分、新しく生産されるデニムが減り、水汚染もCO2排出量も、不当な労働環境にさらされる人々のリスクも削減されます。
クリーニング現場が「wellwashカラー」に込めた想い
私たち勝川ランドリーが、プロの現場で「wellwashカラー」を使用するのは、単に汚れが落ちるからではありません。
「お客様の大切な一着を、1日でも長く着られる状態に保つこと」。それが、洗濯屋としてできる最大の環境貢献だと信じているからです。
カチオン性ポリマーの力で汚れを浮かしつつ、染料を糸に留める。この「守り」の設計こそが、デニムと地球の未来を守るための、私たちの答えです。

7.坂本デニム・メルチデザイン・ITONAMI|長く着るための三位一体
「長く穿く」ためには、手入れだけでなく「作り」も重要です。私たちが共感する3つのブランド・企業のこだわりを紹介します。
坂本デニム:低速織機が紡ぐ「10年後の表情」
効率を優先した高速織機ではなく、あえて旧式の低速織機を使う理由は、糸に過剰なストレスを与えないためです。空気を含みながら織り上げられた生地は、洗濯を繰り返しても硬くなりすぎず、体に馴染み続けます。
メルチデザイン:修理して着る「一生モノ」の設計
大量生産・大量廃棄のサイクルから距離を置き、一つひとつ丁寧に縫い上げる。彼らのデニムは、ボタンが取れても、生地が薄くなっても、修理(リペア)を前提として作られています。
https://melchidesigns.amebaownd.com/
ITONAMI:服を「関係性」として捉える
岡山・児島で生まれたITONAMIは、不要になったデニムを回収し、再び糸に戻して服を作るプロジェクト「FUKKOKU」を推進しています。服を売って終わるのではなく、その後もずっと繋がり続ける姿勢は、まさにサステナブルの理想形です。
8.デニム洗濯のよくある質問集(Q&A)
Q:雨に濡れてしまった時は?
A:放置するとカビやにおいの原因になります。すぐに真水ですすぎ、この記事で紹介した手順で洗濯・陰干ししてください。
Q:生乾き臭がついてしまったら?
A:洗剤不足や、干す際の通気性不足です。一度wellwashカラーで洗い直し、扇風機の風を当てて短時間で乾かしてください。
Q:乾燥機は絶対にダメ?
A:縮ませたい場合は有効ですが、生地へのダメージは最大級です。基本的には避けるべきですが、どうしても使う場合は「30分以内」にとどめ、半乾きの状態で自然乾燥に切り替えてください。
9.まとめ:デニム洗濯は、一着への「敬意」である
デニムを洗うことは、面倒な家事ではありません。その一着が生まれた背景、職人の手仕事、そして共に過ごした時間への「敬意」を払う行為です。
知識を持って判断し、正しく管理する。
その積み重ねが、5年後、10年後のあなたのデニムを、世界に一つだけの美しい「作品」へと育て上げます。
「洗わない」という呪縛から解き放たれ、今日から新しいデニムライフを始めてみませんか。
Save the Oceanが、ここで伝えたいこと
私たちが大切にしているのは、「どのブランドを選ぶか」だけではありません。
その服が、どんな背景で作られてきたのかを知り、理解しようとすること。
背景を知ることで、服は消耗品ではなくなり、自然と大切に着たい、丁寧に洗いたいという気持ちが生まれます。
その一着と、きちんと付き合うこと。その積み重ねが、環境にも、人にもやさしい未来をつくる。
それが、Save the Oceanの考えるサステナビリティです。


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